【報告】公開シンポジウム「気候変動に適応した自然共生社会の実現に向けて」

公開シンポジウム「気候変動に適応した自然共生社会の実現に向けて」


日  程 : 平成25年5月15日 (水) 14:00~17:30
場  所 : 国際連合大学 エリザベス・ローズ国際会議場
主 催: サステイナビリティ・サイエンス・コンソーシアム(SSC)、
国連大学サステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)
東京大学国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)
共 催: 地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)

上記シンポジウムは、100名以上の参加者をあつめ、盛会の内に終了致しました。
プログラムの中の登壇者名をクリックすると、公開可能なプレゼン資料を見ることが出来ます。

概要報告:
サステイナビリティ学では、俯瞰的に対象を見る立場から、地球規模の問題を解決し持続可能な社会の実現に向けて統合的なアプローチをとっています。
SSCではメンバーの大学、自治体、企業などと共に、地球規模の問題に取り組んでおり、本年度の公開シンポジウムでは、気候変動への適応と生態系保全のための対策を取り上げ、レジリエンス(復元性)の高い自然共生社会の実現に向けた「気候変動に適応した自然共生社会の実現に向けて」というタイトルで討議致しました。
公開シンポジウムは2013年5月15日(水)、国際連合大学のエリザベス・ローズ国際会議場で開催されました。
小宮山宏SSC理事長の挨拶でシンポジウムは始まりました。
基調講演は、武内和彦国連大学上級副学長が、生物多様性条約COP10をきっかけとした、国内と国際的な活動の連関として、里山イニシアティブや世界農業遺産への能登・佐渡の認定、また東日本大震災を受けて、生物多様性国家戦略の策定や三陸復興国立公園の指定など、自然共生社会の実現に向けた取り組みについて講演をされました。
三村信男茨城大学地球変動適応科学研究機関長は、気候変動とその影響、対策、世界の動きや適応策の考え方について、科学的データの解析に基づいて、気候変動は持続可能な社会の障害になること、そして温暖化問題には緩和策と適応策の両輪で対応すべきであると指摘されました。
基調講演の後パネル討論が行われ、先ずパネリストとして登壇いただいた方々から短い講演をいただきました。
亀山康子国立環境研究所社会環境システム研究センター室長は気候変動問題への対処は緩和策、適応策、損失&被害の3本柱であると指摘されました。
大崎満北海道大学大学院農学研究院教授は自然共生モデルとサトヤマモデルの展開の可能性として、北海道下川町の取り組みを紹介されました。
齊藤修国連大学サステイナビリティと平和研究所学術研究官は、森林系木質バイオマス利用について、里山・里海の将来シナリオに関する可視化シナリオ分析と、具体例として森林バイオマス利用によるエネルギー自給ポテンシャルについて、北海道下川町を例として紹介されました。
蓮輪賢治大林組常務執行役員は、大林組の中長期環境ビジョン、三つの社会像(低炭素社会、循環型社会、自然共生社会)の実現に向けたアクションプランの紹介をされました。
渡辺竜吾佐渡市農林水産課課長はトキとの共生をブランド化する制度を設け、認証米制度など、さらに世界農業遺産認定で里山の継承への取り組みと生物多様性の佐渡長期戦略について紹介されました。
パネリストの講演のあと、モデレーターの三村教授から、自然共生社会実現に向けて自分の対象としているところで何が重要で、そのポイントについて意見を求められました。
渡辺氏は、佐渡市として、生態系の保全と自然の利用の取り組み、地域社会の認知と地域住民が知る仕組みの重要性を指摘し、自然共生社会とは、トキが生きていける環境を作っていくことが重要で、島全体をどう再生させるかに取り組んでいると説明されました。
蓮輪氏からは、建設事業では難しい面があるが、都市部における緑地については、その土地に合った植生、種の保存を提案しており、大規模工事、人工島構築などでは、海生生物の調査や、公共工事で海域に適合した開発を行い、自然破壊にならぬよう、専門家と協議しながら進めているとコメントされました。
齊藤博士は、多様な生態系サービスを相互のつながりを大事にしてセットで守っていくことが重要で、使われていなくても、持っていることで役立つことがあり、気候変動に対するレジリエンスを高める意味でも重要であると指摘されました。
大崎教授からは、下川町を例として、林業を中心とした自然共生で社会設計に取り組んでいるが、日本は林業の崩壊が問題で、欧州型の林道を作り機械を入れて運び出す方式では高価な外国製機械を購入せざるをえず、日本全体で林業を立て直すシステムを考えるべきであると危惧を示されました。
亀山博士からは、自然共生社会の実現のための国際制度の合意について、罰のある制度ではなく、褒めることで積極的に取り組む制度が求められており、その例として温暖化対応の制度MRV(monitoringについて、measurable, reportable and verifiable)( 温室効果ガス排出量をモニタリング測定、報告及び検証可能)を紹介されました。
モデレーターの三村教授がパネル討論のまとめをされ、特に印象的だったのは、自然や生態系サービスについて、気候変動の影響を受ける被害者としての見方と、人間システムを守ってくれている、調整機能を持った防護者の立場という見方もあることだったと結ばれ、最後に、武内国連大学上級副学長からの閉会挨拶で終了しました。

 

プログラム

14:00~14:20 開会挨拶
小宮山 宏
(SSC理事長、プラチナ構想ネットワーク会長、三菱総合研究所理事長、東京大学総長顧問)
14:20~14:50 基調講演 Ⅰ
「自然共生社会の実現に向けて」
武内 和彦
(国連大学上級副学長、東京大学国際高等研究所IR3S機構長)
14:50~15:20 基調講演 Ⅱ
「気候変動に対する適応策の展開」
三村 信男
(茨城大学地球変動適応科学研究機関長)
15:20~15:30 休憩
15:30 – 17:30 パネル討論
モデレーター:
・武内 和彦
パネリスト:
・三村 信男
亀山 康子(独立行政法人国立環境研究所社会環境システム研究センター室長)
大崎 満(北海道大学大学院農学研究院教授)
齊藤 修(国連大学サステイナビリティと平和研究所学術研究官)
蓮輪 賢治(株式会社大林組常務執行役員 技術本部副本部長)
渡辺 竜五(佐渡市農林水産課課長)

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